頚椎椎間板ヘルニア

1: 頸椎椎間板ヘルニアとは

頸椎椎間板ヘルニアは首の骨をつなぐ頸椎の椎間板が変性し、本来の位置から突出して神経を圧迫する病態です。この状態は首や肩の痛み、腕や手のしびれ、筋力低下などさまざまな症状を引き起こす可能性があります。

1-1: 頸椎椎間板ヘルニアの読み方

「頸椎椎間板ヘルニア」は「けいつい ついかんばん へるにあ」と読みます。英語では “Cervical Disc Herniation” と表記し、首 (Cervical) にある椎間板 (Disc)が突出 (Herniation) している状態を表します。

1-2: 頸椎椎間板ヘルニアの症状

頸椎椎間板ヘルニアの典型的な症状は以下の通りです。

  • 首の痛みや肩こり
  • 腕や指のしびれ、痛み(放散痛)
  • 筋力低下

重症化すると歩行障害や排尿障害といった重大な脊髄症状が現れることもあります。
これらの症状は日常生活に大きな支障をきたすので早期の診断と適切な治療が重要です。

1-3: 頸椎椎間板ヘルニアの原因

頸椎椎間板ヘルニアの主な原因は以下の通りです。

  • 加齢に伴う椎間板の変性
  • 長時間の不良姿勢(猫背、前かがみなど)
  • スポーツや交通事故などによる外傷
  • パソコン作業やスマートフォンの長時間の使用

特に現代社会ではパソコンやスマートフォンの使用による長時間の不良姿勢が発症のリスクを高める要因として注目されています。

1-4: 病気としての頸椎椎間板ヘルニアのレベル

頸椎椎間板ヘルニアは症状の程度によって以下の3つのレベルに分類されます。

  • 軽度:首の痛みや肩こりのみ
  • 中等度:神経根症状(腕や指のしびれ、痛み、筋力低下)
  • 重度:脊髄圧迫症状(歩行障害、排尿障害など)

これらのレベルは、治療方針を決定する上で重要な要素となります。

2: 頸椎椎間板ヘルニアの診断

頸椎椎間板ヘルニアの診断は詳細な問診、診察所見そして画像検査を組み合わせて行われます。

2-1: 検査方法と診断基準

診断には、以下の検査が行われます。

  • 問診:症状、既往歴、生活習慣などを詳しく聞き取ります。
  • 視診、触診:姿勢、首の動き、圧痛などを確認します。
  • 神経学的検査:ジャクソンテスト、スパーリングテストなどで神経の圧迫の有無や程度を評価します。
  • 画像診断:X線、CT、MRIなどを用いて椎間板や神経の状態を確認します。

これらの検査結果を総合的に判断し、頸椎椎間板ヘルニアの診断が確定します。

2-2: MRI検査

MRI検査は、頸椎椎間板ヘルニアの診断において非常に重要な役割を果たします。MRIは神経の圧迫状態や椎間板の突出を鮮明に画像化できるので診断の精度を高め、適切な治療方針を決定するために不可欠な情報を提供します。
特に手術を検討する場合にはMRI画像が手術の適応や方法を判断する上で重要な資料となります。

2-3: 医療機関での受診の必要性

腕や指のしびれ、痛み(放散痛)、筋力低下などの症状が見られる場合は早期に整形外科や脊椎専門医を受診することが必要です。これらの症状は頸椎椎間板ヘルニアの可能性を示唆し、放置すると症状が悪化する恐れがあります。
早期の診断と治療は症状の改善と後遺症の予防に繋がります。

3: 頸椎椎間板ヘルニアの痛み

頸椎椎間板ヘルニアによる痛みはその原因とメカニズムによって特徴があります。

3-1: 痛みを和らげる方法

急性期の痛みを和らげるためには以下の方法が効果的です。

  • 安静:首を動かさずに安静を保ちます。
  • 頸椎の固定:必要に応じて頸椎カラーを装着します。
  • NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬):医師の処方に従って服用し、炎症と痛みを軽減します。
  • 神経障害性疼痛治療薬:医師の処方に従って服用し、炎症と痛みを軽減します。

これらの方法は痛みを一時的に緩和するだけでなく炎症を抑えることでより根本的な改善にも繋がります。

3-2: 放散痛のメカニズム

頸椎椎間板ヘルニアの特徴的な症状である放散痛は突出した椎間板が神経根を圧迫することで生じます。神経根は首から腕や手に向かう神経の根元で、圧迫により神経が支配する領域に痛みやしびれが広がります。
この痛みはまるで電気が走るような鋭い痛みとして感じられることが多いです。

3-3: しびれの原因と対策

神経の圧迫は血流の悪化も引き起こし、しびれの原因となります。しびれを改善するためには以下の対策が考えられます。

  • ビタミンB群の補給:神経の機能を助ける効果が期待できます(医師に相談してください)。
  • 物理療法:温熱療法や電気刺激療法などにより血流を改善し、神経の働きを正常化させます。
  • 適度な運動:首や肩周りの筋肉を動かすことで、血流を促進します。

これらの対策はしびれの根本的な原因に対処し、症状の改善を目指すものです。

4: 頸椎椎間板ヘルニアの治療法

頸椎椎間板ヘルニアの治療法は症状の程度や患者さんの状態に合わせて選択されます。

4-1: 保存的療法の選択肢

手術を行わない保存的療法には以下のような選択肢があります。

  • 薬物療法:NSAIDs、筋弛緩薬、神経障害性疼痛治療薬などを用いて痛みや炎症を抑えます。
  • 理学療法:牽引、温熱療法、運動療法で症状の軽減と機能回復を目指します。
  • カラー固定:頸椎カラーを用いて首を固定し、安静を保ちます。
  • 神経ブロック:腕神経叢ブロック、星状神経節ブロック、神経根ブロックなどの種類があり、症状によって選択します。

これらの治療法は多くの患者さんにとって有効であり、症状の改善が期待できます。

4-2: 手術の考慮と術後経過

保存療法で十分な効果が得られない場合や症状が重い場合には手術が検討されます。
主な手術方法としては、前方固定術、後方除圧術や内視鏡手術などがあります。
これらの手術は神経の圧迫を取り除き、症状の改善を目指すものです。
術後はリハビリテーションを行い首の機能回復を図ります。
多くの場合、1~2週間程度の入院で退院が可能です。

4-3: 頸椎椎間板ヘルニアを早く治す方法

頸椎椎間板ヘルニアからの早期回復のためには、以下の点が重要です。

  • 正確な診断に基づく適切な治療
  • 安静と運動の適切なバランス
  • 正しい生活習慣の実践

これらの要素を総合的に実践することで、早期回復と再発予防に繋がります。

5: 頸椎椎間板ヘルニアの予防とリハビリ

頸椎椎間板ヘルニアの予防と治療後のリハビリテーションは、長期的な健康維持のために重要です。

5-1: やってはいけないこと

以下の動作や姿勢は頸椎に負担をかけるので避けるようにしましょう。

  • 首を急にねじる動作
  • 長時間のうつむき姿勢
  • 片側に荷重がかかる動作

これらの動作は椎間板への負担を増やし、症状を悪化させる可能性があります。

5-2: 効果的なストレッチ方法

頸椎の柔軟性を保つためには以下のようなストレッチが効果的です。

  • 前屈ストレッチ:顎を引いて首の後ろを伸ばすストレッチ
  • 側屈ストレッチ:頭を左右に倒して首の横を伸ばすストレッチ

これらのストレッチを定期的に行うことで、首の筋肉の柔軟性を保ち、負担を軽減することができます。

5-3: 運動と姿勢改善のポイント

以下の点に注意して運動と姿勢を改善しましょう。

  • 体幹トレーニング:腹筋や背筋を鍛え正しい姿勢を保ちます。
  • モニター位置の調整:パソコン作業を行う際はモニターを目の高さに設置し、首 への負担を軽減します。
  • 適度な運動:ウォーキングや水泳などの全身運動は血流を促進し、首や肩の筋肉の緊張を和らげます。

これらの取り組みは頸椎への負担を軽減し、長期的な健康維持に繋がります。

6: 頸椎椎間板ヘルニアの経過

頸椎椎間板ヘルニアの経過は個々の状態や治療法によって異なります。

6-1: 病気の進行と合併症

放置すると椎間板の変性が進行し、骨棘形成や脊髄症が進行する可能性があります。重篤な症状を引き起こすことがあるので注意が必要です。

6-2: 自然治癒の可能性

軽度から中等度のヘルニアの場合、自然治癒する可能性もあります。一般的には半年から1年程度の期間で、突出した椎間板が自然に吸収され、症状が改善することがあります。ただし自然治癒を期待する場合でも、適切な安静と生活習慣の見直しは重要です。

7: 最後に

「ヘルニア=すぐに手術」と誤解する方も多いですが、実際には多くの頸椎椎間板ヘルニアは保存療法で改善します。手術は保存療法で十分な効果が得られない場合や重篤な症状がある場合に検討される選択肢です。

脊椎(SPINE)の主な症状

腰痛・首の痛みでお悩みの方 脊椎
・頚椎椎間板ヘルニア 詳細
・頚椎症性脊髄症 詳細
・腰椎椎間板ヘルニア 詳細
・腰部脊柱管狭窄症 詳細
・腰椎変性すべり症 詳細
・腰椎分離すべり症 詳細
・骨粗しょう症 詳細
・頚椎症性神経根症 詳細
・外傷性頚部症候群 詳細
・腕神経叢損傷 詳細
・胸郭出口症候群 詳細
・側弯症 詳細
・その他  

関節(JOINT):膝・股関節の主な症状

膝・股関節の痛みでお悩みの方 膝・股関節
・半月板損傷 詳細
・変形性股関節症 詳細
・変形性膝関節症 詳細
・大腿骨頚部骨折/大腿骨転子部骨折 詳細
・その他(外反母趾、上肢の変形性関節症など)  

関節(JOINT):肩の主な症状

肩の痛みでお悩みの方 肩関節
・肩関節周囲炎 詳細
・五十肩・凍結肩 詳細
・肩腱板断裂 詳細
・肩関節脱臼・亜脱臼 詳細
・変形性肩関節症 詳細
・肩スポーツ障害 詳細
TOP