医療法人社団 健整会 米倉脊椎・関節病院

トリガーポイント注射

トリガーポイント注射、ハイドロリリースについて

トリガーポイント注射とハイドロリリースの可能性

長引く痛み、原因が特定できない不快感、さまざまな治療を試しても改善しない症状でお悩みではありませんか?レントゲンやMRIなどの画像検査では捉えにくい、筋肉や筋膜など軟部組織の機能異常が潜んでいる可能性があります。

近年、このような筋肉筋膜の機能障害が引き起こす多様な症状筋膜性疼痛症候群(Myofascial Pain Syndrome: MPS)という概念で捉えられるようになってきました。 このMPSへのアプローチとしてトリガーポイント注射やハイドロリリースが注目されています。

筋膜性疼痛症候群(MPS)とは

私たちの身体は骨格を支え、滑らかな動きを生み出すために筋肉とそれを取り囲む筋膜という組織が複雑に連携しています。長時間の不良姿勢や繰り返しの動作および外傷などが原因で筋肉の一部が過度に緊張し、硬く凝り固まってしまうことがあります。

MPSによる症状は多岐にわたります。肩こりや腰痛といった一般的なものから頭痛、めまい、消化器系の不調、自律神経の乱れなど一見すると痛みの原因とは結びつきにくい症状が現れることもあります。

画像検査では異常が見つからず慢性的な痛みに苦しんでいる方も少なくありません。

トリガーポイント注射とは

トリガーポイント注射では医師が触診やエコー(超音波画像診断装置)を用いて痛みの原因となっている筋肉の硬結(トリガーポイント)を特定します。

特定されたトリガーポイントに対し局所麻酔薬を中心とした少量の薬剤を注射します。この注射によって以下の効果が期待されます。

  • 痛みの緩和
    局所麻酔薬の直接的な作用により痛みの信号が遮断され、速やかな痛みの軽減が期待できます。
  • 筋肉の弛緩
    薬剤の作用と注射による物理的な刺激によって過度に緊張した筋肉が緩み、血流が改善されます。
  • 痛みの悪循環の遮断
    痛みが軽減されることでさらなる筋肉の緊張や痛みを引き起こす悪循環を断ち切ることが期待できます。

トリガーポイント注射はレントゲンには映らない軟部組織の状態を触診や必要に応じてエコーによる精密な診断に基づいて行われるため、より的確な治療が期待できます。

ハイドロリリースとは

トリガーポイント注射の考え方を応用し、生理食塩水を主体とした液体を注射することでより広範囲の組織の癒着を剥がし機能改善を目指すハイドロリリースが注目されています。

ハイドロリリースでは局所麻酔薬に加えて、組織間の滑走性を高める効果が期待できる生理食塩水をエコーガイド下で筋膜や筋肉の間、神経の周囲などに注入します。 この液体が、癒着して動きが悪くなっていた組織と組織の間を物理的に剥がし滑らかな動きを取り戻すことを目的としています。

ハイドロリリースの主な利点は以下の通りです。

  • 広範囲の組織にアプローチ
    トリガーポイント注射がピンポイントの治療であるのに対しハイドロリリースはより広範囲の筋膜や組織間の癒着に対してアプローチできます。
  • 組織の滑走性改善
    生理食塩水の注入により組織間の摩擦が軽減され、本来の動きを取り戻すことが期待できます。
  • 比較的安全性が高い
    主に生理食塩水を使用するため、局所麻酔薬による副作用のリスクを低減できる可能性があります。

ハイドロリリースは慢性的な痛みだけでなく、関節の可動域制限や神経の圧迫による症状などさまざまなMPS関連症状に対して応用が期待されています。

トリガーポイント注射、ハイドロリリースは次のような方におすすめです

  • レントゲン検査では異常がないと言われたが、痛みが続いている方
    画像検査では捉えられない筋肉や筋膜の異常が痛みの原因である可能性があります。
  • 内服薬や外用薬、リハビリテーションなどの治療で効果が感じられない方
    痛みの根本原因にアプローチできていない可能性があります。
  • 薬に頼らずに痛みを改善したい方
    局所的な治療であるため、全身的な副作用のリスクを抑えられます。
  • 慢性的な肩こり、腰痛、首の痛みにお悩みの方
    これらの症状は、MPSの代表的な症状です。
  • スポーツによる筋肉の痛みや可動域制限がある方
    筋膜の柔軟性を取り戻し、パフォーマンス向上や怪我の予防にも有用です。
  • 交通事故後のむちうちによる痛みや不調が続いている方
    軟部組織の損傷や癒着が原因となっている場合があります。

適応が期待される疾患・症状

トリガーポイント注射、ハイドロリリースは、以下のようなさまざまな疾患や症状に対して、症状の緩和や機能改善が期待されています。

  • 肩関節周囲炎(五十肩): 肩関節の痛みや可動域制限の原因となる関節包の炎症や癒着を軽減する。
  • 腰痛症: 慢性的な腰の痛みやぎっくり腰を繰り返す方に対して腰部の筋肉や筋膜の緊張を緩和し、安定性を高める。
  • 梨状筋症候群: お尻の奥にある梨状筋という筋肉が坐骨神経を圧迫することが原因で、お尻から足にかけての痛みやしびれを軽減する。
  • 腱鞘炎: 手首や指の腱とその周囲の組織に炎症が起こることで生じる痛みに対し、周囲の筋肉や筋膜の緊張を和らげ、腱の動きを滑らかにする。
  • 頚椎捻挫(むちうち): 交通事故などによる首の急激な動きによって生じる首や肩の痛み、頭痛、めまいなどを軽減する。
  • 寝違え: 首の筋肉が急に緊張することで起こる痛みや可動域制限を改善する。
  • 肩こり: 首から肩にかけての筋肉の慢性的な緊張を軽減する。

上記以外にも、さまざまな筋肉や筋膜の機能異常が関与する痛みや不調に対してトリガーポイント注射やハイドロリリースが有効な場合があります。 普段から気になる痛みやしびれがありましたらお気軽にご相談ください。

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